肩こりはデスクワークする方、その中でも特に女性に多い症状です。当院が一番得意とする分野でもあります。このページでは肩こりに悩む方が最低限知っておいて欲しい知識をお伝えします。
肩こりの4大原因
当院では肩こりの原因は次の4つと考えています。
- 姿勢の崩れ
- よくない体の使い方(クセ)
- 精神的ストレス
- 内臓(特に心臓・肺など呼吸・循環器系)の疾患
これらの原因の中で4番目の内臓の疾患に関しては整体の範囲外です。中年期以降の方で胸や背中付近の痛みが強く何をやっても改善しない場合は、内臓の疾患も疑った方がよいでしょう。とはいえ、そういうケースは希で、1〜3の原因で肩こりになっている方が大部分だと思います。
ここでは1〜3がなぜ肩こりの原因になるかを説明していきたいと思います。
姿勢の崩れと肩こり
普段あまり気にすることはないと思いますが、頭は14ポンドのボーリング玉、腕は片方で2リットルのペットボトル2本分ぐらいの重量があります。
そんな重いものを支えながら私たちは生活しているわけですが、正しい姿勢で立つと頭や腕の重さは背骨や靱帯・筋膜に分散してかかり、筋肉の負担は最小限で済みます。
ところが、姿勢が崩れるとその重さの大部分を筋肉がささえる状況になってしまいます。その崩れた姿勢の代表格が猫背・猫首です。
- 猫背
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胸あたりから全体的に背中丸くなった状態。胸の丸みに対応して腰の反りも大きいケースと、腰の反りがなくなり骨盤から首までCカーブを描くパターンがあります。前者はスポーツをしている人に見られることもよくあります。
- 猫首
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背中はそんなにまくるないけど首だけ極端に前に出ている状態。頚椎と胸椎がつながる関節部分がぼっこっと出て固まっていることが多いです。
下の図のように猫背・猫首になると頭が背骨からだいぶ前に出た状態になります。こうなると頭の重さは体を折り曲げる方向にかかり、それに対抗して立つために背中の筋肉が緊張します。これが首から背中にかけてのコリの大きな原因となります。
このような猫背や猫首になった状態が長く続くと体の前面の筋肉・筋膜が短い状態で固定され伸びにくくなり、真っ直ぐな姿勢を取りづらくなります。その一方で、背中側の筋肉は引っぱられながら力を出す(伸張固定)状態になります。この引っぱられながら力を出す状態が長く続くとコリや痛みといった感覚になっていきます。
このように姿勢の崩れは首から背中にかけてのコリに大きな影響を及ぼします。このことをしっかり理解しておきましょう。
体の使い方(クセ)と肩こり
巻き肩といういのは下図のように肩が前にでている状態です。この状態が強い人は首から肩にかけて肩こりの人がとても多いです。
この状態は一見肩が前に出ているように見えますが、正確には肩を(自分の力で)つり上げている状態です。
つり上げるということは肩の筋肉(肩甲挙筋や上部僧帽筋)を使っているということですから疲れてコリを感じるのは当然ですよね。
肩こりになりやすい人は何か作業をするときや荷物を持つときに必要以上に肩に力を入れる(肩をすくめ気味にする)クセが付いていることが多いです。そして肩に長時間力を入れ続けた結果、力を上手く抜けなくなり慢性的な肩こりを訴えるようになります。
このように体の使い方がよくないと筋肉に余計な負担をかけコリや痛みの原因となります。
巻き肩と猫背・猫首は同時に発生しているケースが多いですが、私は巻き肩は悪い姿勢というよりは肩に力を入れてしまう体の使い方の問題だと考えています。
ストレスと肩こり
人に限らず哺乳動物の多くは怒りや不安、警戒心を持つと首と肩をすくめ背中を丸めた姿勢になります。これは弱い腹側を守る本能的な動作です。
ストレスに対するこの反応は、石器時代に外敵に襲われるようなストレスに対しては合理的でした。しかし現代社会のストレスは実際に襲われるわけではありません。体の腹側を守る必要は全くないのですが…自然と体はその姿勢をとろうとしてしまいます。また、ストレスを受ける時間も外敵に襲われるのは一瞬ですが現代のストレスは長時間続きます。
このような条件が重なって、不要な首・肩の緊張を長時間持続してしまうことがあります。これがストレスによる肩こりや頭痛です。
例えば空手やボクシングなどの試合を見ると選手たちは猫背猫首巻き肩の姿勢が多いです。弱い腹側の面積を小さくし、腕でガードしようとすると自然とこういう姿勢になります。戦うときは怒りや不安、警戒が大きい状況です。どちらが先かは分かりませんが進化の過程で緊急事態の時は猫背巻き肩姿勢を取るようになっていたと考えられます
肩こりになる筋肉
今度は筋肉という切り口で肩こりを見てみましょう。
肩こりを訴える人にその場所をきくと2つのタイプに分かれます。
- 首から両肩へと横に広がる
- 首から背中へと縦に広がる
両肩に広がるタイプがコリや痛みを感じる筋肉は次のようになります。
- 上部僧帽筋
- 肩甲挙筋
縦に広がるタイプがコリや痛みを感じる筋肉はこちら。
- 頭板状筋
- 頚板状筋
- 菱形筋
- 中部僧帽筋
ただし、これらの筋肉が肩こりの原因かというとそういわけでもありません。肩こりがひどい方は次に挙げる筋肉のどれかがガチガチにこり固まっていたり触ると激痛という状態になっています。
- 小胸筋
- 斜角筋
- 胸鎖乳突筋
- 肩甲下筋
- 前鋸筋
こういった筋肉の多くは体の前側の筋肉で、猫背・巻き肩姿勢を作る時に使われる筋肉です。この縮む筋肉達を柔らかくすることが肩こりの対策として重要になってきます。
肩こり対策
肩こりの対策は先ほど挙げた3つの原因を取り除く or 影響を小さくすることです。ポイント次の4つ
- 適切な姿勢をとる
- 肩甲骨をしっかり動かす
- 肩に力を入れるクセをなおす
- 体の前側を柔らかくする
それぞれをもう少し詳しく解説しましょう。
適切な姿勢をとる
ここでいう適切な姿勢とは首や肩に必要以上に負担をかけない姿勢のことです。適切な姿勢のポイントは次の4つ。
- 胸を張るのではなく上に伸びる
- アゴは軽く引いて下ではなく前を向く
- ヘソのあたりに軽く力を入れる
- 机など作業環境の高さを適切に設定する
- 同じ姿勢を長時間続けない
この中で恐らく最も重要なのは5番目の同じ姿勢を長時間続けないということです。「この姿勢をしておけば何も問題が起こらない」という完璧な姿勢はありません。
どんなによいと言われている姿勢も長時間続ければ何処かが疲れてコリや痛みの原因になります。一番リラックスできるであろう寝転んでいる状態でさえも、ずっと動かなければ床ずれになりますよね。起き上がっている状態ならなおさらです。最低でも1時間に一度は体を動かして姿勢を変えましょう。
完璧な姿勢はないとはいえ、長時間続けるならなるべく負担が少ない姿勢をとりたいです。そこで大切になるのが4番目の作業環境です。パソコン作業をする人を例に挙げると、机やイス、モニターの高さが重要な要素となってきます。
これはPC作業の例ですが、家事やテレビ、スマホを見るなども同じで、とにかく長時間毎日行う動作には全てあてはまることです。
具体的な対策はケースバイケースなのでここで挙げることはできませんが、上の1〜3が意識しにくい or できないような場合はなんらかの工夫をするか頻繁に姿勢を変えることをする必要があります。
肩甲骨を動かす
「肩を回しましょう」というと肩こりがひどい方ほど腕だけを回す傾向があります。ですが、肩こりで辛くなる筋肉は全て肩甲骨に付着しているので肩甲骨を動かさないとそれらの筋肉に刺激が入りません。
肩甲骨を可動域一杯に大きく動かす、とういことを頻繁にするだけで特に横に広がる肩こりにはとても効果があります。
両手の親指を首のつけ根につけ、親指を付けた部分を中心として指が離れないように肩甲骨を大きくゆっくり回します。前回し、後ろ回し各10回ずつ。きちんと出来ていれば10回でも首や肩に軽く疲労を感じるはずです。
上手くできない、痛みがある場合は腕をだらんと下げて肩甲骨を回すことからスタートしてください。ポイントは肩甲骨を上げる(肩をすくめる)動作の時に肘を曲げないこと。腕は脱力でしてぶらぶらで健康コツだけを動かします。
肩に力を入れるクセをなおす
これは自分で気付くしかありません。
具体的には作業中に目に付くところに付せんを貼ったり鏡を置き、自分で気付けるような環境を作ります。
最初は気付いても少し時間が経つとすぐに力がはいってしまうと思いますが、気付くことが大切です。気付いて脱力する回数が増えれば増えるほど力んでいる自分に気付きやすくなっていくので諦めずコツコツ取り組んでください。
体の前側を柔らかくする
これはストレッチをすることです。胸・首の前側(体が反る方向に)にストレッチをします。色々種類がありますが、次の3つをやっておけば多くのケースで有効です。
- 大胸筋のストレッチ
- 胸鎖乳突筋のストレッチ
- 腹筋のストレッチ
肩こりでお悩みの方はこれらのことに取り組んでみてください。